▼ 第八回公判の巻(C氏) その五 〜判決〜
2 実行行為性及び独立の支出主体性について
(1)前記認定の事実に加え,関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
@被告人は,Aの指示を受けて9月28日ころから金銭出納帳の作成を始めるとともに,事務所の現金を被告人が預かってクリアーファイルに入れて保管し,帰宅する際はリュックサックに入れて帰るなどしていた。
A被告人は,同月末ないし10月初めころ,AからDを紹介され,その際,Aから,Dが出納責任者となっているが,事務所での現金出納はすべて被告人に任せる旨依頼され,それを引き受けた。そして,被告人はDと協議して,被告人が実際の金銭の支払等を担当し,Dは銀行への届出の印鑑を保管し,ある程度まとまった金員が必要になった場合には同人が銀行から預金の払い戻しを受けてこれを被告人に交付することとし,そのため,被告人は,同月5日にDから預金通帳を受け取り,同日以降は,現金のみならず,同通帳も管理するようになった。
B被告人は,Dが数か月前,大動脈瘤破裂で入院した後で体調が芳しくなかったことを考慮し,現金の管理だけでなく,選挙管理委員会に届け出る収支報告書(甲8)をも作成しなければならないと考え,片手間ではできないと判断し,Aの了解を得て同月9日に失業給付を停止する手続をし,同日から日当1万円を受け取ることとした。被告人は,領収書等に基づき,仕訳して金銭出納帳に入力し,残金の照合をして収支を管理するとともに,「のぶよしたか選挙事務所」名義で9月30日に購入したノートパソコンを使用して金銭出納帳を作成するとともに,選挙管理委員会に提出する収支報告書を入力した。
C被告人は,10月2日ないし4日,7日,24日には事務所に行っていないが,その際の現金等の管理については,あらかじめ支出するものは仕訳をした上でその旨EやDに連絡しておいて支出してもらい,その都度必要となった支出分については,クリアーファイルに入れた現金の中から支出し,領収証を同クリアーファイルに入れるよう指示して対応してもらい,後に被告人が事務所に出勤した際,領収証と残金を対照して間違いがないことを確認していた。それは,被告人が帰宅のため退所した後に支払がなされた金員についても同様の処理であった。
Dアルバイト代の支払方法は,被告人がEに対し,支払の前日くらいにはアルバイト代として必要な額を教えるよう指示し,Eはアルバイト各人の出勤簿に基づいて報酬額を算出したメモを被告人に渡し,被告人はメモに基づきDに銀行から金員を引き出してもらい,被告人がアルバイトごとに算出された金額に分けた上でEに手渡し,同人は1人分ずつ封筒に入れ,宛名を書いてアルバイトに対して交付するのが通常であった。
(2)以上の事実によれば,出納責任者としての届出はD名義でなされていたものの,同人が生命に関わる大病で入院したことがあり,十分な選挙運動ができないため,選挙事務所における現金出納は被告人に任され,そういった事情を知った被告人がDとも話し合って,自ら事務所運営の金銭面の管理を引き受けて現金の出納を行うとともに,選挙後選挙管理委員会に提出する収支報告書のデ一タをパソコンに入力してその作成の準備をするなど,積極的に関与したことが認められる。
(3)そうすると,被告人は,出納責任者と意思を通じて,延を当選させる目的の選挙運動に邦いて,それに要する費用の出納管理を自ら主体的に実質的な担当者として行ったものであることは明らかである。
(4)また,受供与者らの供述調書等の関係証拠によれば,本件のアルバイトによる選挙運動の内容や時間が特定されていることも明らかである。