▼ 第五回公判の巻(A+B氏) その弐 〜判決要旨〜
平成15年3月11日宣告 裁判所書記官 U
平成14年第350号 公職選挙法違反被告事件
判決要旨
(被告人)A B
主文
被告人両名をいずれも懲役1年に処する。
この裁判が確定した日から,被告人Aに対し4年間,
被告人Bに対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人A及びBは,平成14年10月27日施行の衆議院小選挙区選出補欠選挙(福岡県第六区)に際し,同選挙区から立候補した延嘉隆の選挙運動者であるところ,被告人両名は,C及びEらと共謀の上,同候補者に当選を得させる目的をもって,同候補者の選挙運動者であるFほか17名が同候補者に当選を得させるため,同年10月14日から同月26日までの間,福岡県久留米市通町6番地17日栄ビル3階所在の同候補者の選挙事務所に設置された電話機により同選挙の有権者等多数人方に電話をして,同候補者への投票を依頼するなどの選挙運動をしたことの報酬とする目的をもって,別紙記載のとおり,同年10月21日から同月30日までの間,合計19回にわたり,同選挙事務所ほか3か所において,Fほか17名に対し,現金2400円ないし4万4400円の合計32万5800円を供与したものである。
(量刑の理由)
本件は,衆議院小選挙区選出補欠選挙(福岡県第6区)にあたり,被告人らが,選挙運動者に対し,選挙運動をなしたことの報酬として,金銭を供与したという公職選挙法違反の事案である.
上記選挙区から選出されていた古賀正浩が平成14年9月6日に死亡したため補欠選挙が実施されることとなり,被告人Aは,地元出身者が選出されるべきだと考えて延嘉隆を擁立し,中心的な立場で準備をすすめていたところ,事務を担当していたEから人手が足りないと指摘されてアルバイトを雇い入れることとし,時給等の具体的条件を検討した上,同人に対しその旨を指示した。また,被告人Bは,ダイレクトメールの発送等につき人手が足りないと被告人Aに対し指摘した際,同被告人がアルバイトを雇う意向である旨答えたことから,被告人Bも自ら知り合いの学生に声をかけてアルバイトとして雇い入れた。被告人両名らは,アルバイトに対し当初はダイレクトメールの発送等の作業をさせていたが,告示日目前である平成14年10月14日に文書頒布による選挙運動をさせ,告示日である同月15日に車上運動員としての選挙運動(無届け)を,同日から同月26日までの間に電話による投票依頼をさせ,その後報酬を支払った。以上の犯行に至る経緯に照らすと,被告人両名は,選挙運動の人手不足を解消するために,選挙法規を検討したり,不明な点を選挙管理委員会に問い合わせるなどの慎重な配慮をすることなく,安易にアルバイトの雇い入れを決定し,その後,集票のため選挙運動をさせるに至ったもので,公職選挙法を軽視した犯行というほかなく,動機形成過程は酌むべき点に乏しい。
運動買収は,選挙の自由公正を害し,代表民主制の根幹を揺るがす犯行であるところ,被告人Aは,上記のとおり候補者の擁立に始まって本件選挙運動に及ぶ一連の経緯において中心的主導的な立場にあったにもかかわらず,慎重な配慮を欠いたまま安易ににアルバイトに選挙運動をさせたものであり,また,被告人Bは,上記のとおり自らアルバイトの雇い入れのために学生らに声をかけ,アルバイトに対して電話による投票依頼等を具体的に指揮しているのであり,いずれの被告人も積極的に関与したものである。そして,報酬の受供与者は未成年を含む18名に及び,供与金額の合計も32万5800円と少なくないことに照らせば,発生した結果も軽視できない。
他方,被告人両名はいずれも本件を大変後悔し,事実を認めて反省の態度を示していること,被告人Aについては前科がないこと,被告人Bについては,職を辞していることなどの酌むべき事情も認められる。
以上の諸事情を総合配慮し,主文のとおり判決する。
(求刑 被告人両名につきいずれも懲役1年)
(裁判所)福岡地方裁判所久留米支部 裁判長T 裁判官N 裁判官M
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